蒼 始 -アオノハジマリ-

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  「はーくん、それなに?」 ひとりではちょうどもの足りなく感じ始めた時だった。 逸斗が通う幼稚園で一番仲のよい『楠本 篤希(クスモト アツキ)』が掌のくすんだ白球に興味を示したのは。 「知りたい?」 大人の世界では大袈裟な事ではない知識を、逸斗は得意げな眼差しで披露する。 「やきゅうのボールや。 これな、硬いねんで」 「やきゅう……? それ、おもろいん?」 爛々とした瞳で話す逸斗に、楠本は興味津々の様子で訊ねた。 「おもろいでぇー。 あっちゃんも一緒にやる?」 ――ひとりではちょうどもの足りなく感じ始めた時だった。 逸斗はここぞとばかりに楠本を招く。 楽しい世界、野球の世界へ。  
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