蒼 始 -アオノハジマリ-

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  ――ふたりの“蒼い刻(トキ)”が始まった。 逸斗が相手にしていた塀が親友の楠本になり、野球の楽しさは倍に膨らむ。 硬い白球に痛む手も、どこかうれしい。 “野球”を知ったふたりの幼い日常は劇的に変わり、紲(キズナ)も深まる。 「はーくん、やきゅう楽しいなぁ」 「うん!」 「けど、手ぇ痛いなぁ」 「うん!」 いくら球速は緩やかとは云え、硬球は小さな手に驚くべきダメージを与える。 「あっちゃん、……ぐろーぶ、欲しいなぁ」 「欲しいなぁ……」 決して、キャッチボールの手を止める事なく、ふたりは願望をつぶやいた。 その年のクリスマス、ふたりが揃ってサンタクロースに“ぐろーぶ”をねだったのは云うまでもない。  
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