4人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「ふぇ!?べ、別に私達はそんなんじゃ……!」
顔が沸騰してしまいそうな勢いで紅く染まる稲石さん。
初めて見る稲石さんのそんな表情に私は少し興味が湧いてみたり。
ちょっと頭の隅っこに悪戯心が芽生えた。
「なるほど。………ということは稲石さんの片想いというわけですか?」
「い、いや、だからそんなんじゃなくて!───あたしと稜は『ただの幼なじみ』だよ……」
稲石さんは俯いてそう小さく呟いた。
……『ただの幼なじみ』の話でそんなに紅潮するわけないよね。
稲石さんを見ていると、私にも幼なじみがいたことを思い出す。
「『ただの幼なじみ』…ですか。なるほど。私にも幼なじみがいましたが、今はもう……」
「え?まさか……」
私は声のトーンを下げて暗い雰囲気を演出する。
稲石さんは顔を上げて私を正面から見た。
そして私はこう続ける。
「隣町の高校に毎日元気に通っています」
「………」
稲石さんは呆気に取られた顔をしていた。
最初のコメントを投稿しよう!