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「私は笑。
読み方は男みたいでしょ?でもって変な漢字。
でも気に入ってるんだ、この名前。」
どんどん自分のことを語り出す笑に僕はちょっと戸惑ってはいたものの、笑の声は母みたいに優しくて聴き入ってしまっていた。
「母親の笑深(エミ)と父親の笑太郎(ショウタロウ)の共通してる漢字一字をとって付けられた名前だからさ、
ああ、私、愛されてたんだなぁって思うの」
「そうなんだ…」
“愛されてた”
「あとね、私弟がいたんだぁ」
弟が“いた”
僕が触れていいのだろうか…
そんな心配をする僕を他所に笑は話しを続ける
「5年前に死んじゃったんだけどさ、コイツが悪ガキでねぇ
あ、深太(シンタ)って言うんだけど」
学校が閉まるまで笑は僕にずっと話しをしてくれた。
今日一日、それも放課後のほんの数時間で笑のことがわかったような気がした。
僕しか知らない本当の笑。
すごく、すごく嬉しかったんだ…
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