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神様用の白いお銚子とお猪口の乗った、小さな膳を持って、家に戻ろうと立ち上がった時だった。 ───……ら 「……?」 今… 何か聞こえた? ───…くら 「──ッ!?」 やっぱり。 私は、周りを見渡した。 二百坪ちょっとある、田舎ならでわの少し広めの敷地。 家の西側には、飛び石の置かれた小道。それを挟んである、家庭菜園の北側に祭られた祠の前に立つ私は、誰もいない周囲に耳をすました。 ────サワワワ 風が、静かに常緑樹の葉を揺らす音だけが聞こえた。 「んー?」 おかしいな。 確かに聞こえたと思ったんだけど… もしかしたらまた聞こえてくるかも…と、しばらくその場に立っていた。 西の空に沈みかけた太陽が、辺りを黄色く染めている。 そのやわらかい景色は、冷たい冬の、肌に刺さるような冷気を和らげてくれる気がした。
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