104人が本棚に入れています
本棚に追加
神様用の白いお銚子とお猪口の乗った、小さな膳を持って、家に戻ろうと立ち上がった時だった。
───……ら
「……?」
今…
何か聞こえた?
───…くら
「──ッ!?」
やっぱり。
私は、周りを見渡した。
二百坪ちょっとある、田舎ならでわの少し広めの敷地。
家の西側には、飛び石の置かれた小道。それを挟んである、家庭菜園の北側に祭られた祠の前に立つ私は、誰もいない周囲に耳をすました。
────サワワワ
風が、静かに常緑樹の葉を揺らす音だけが聞こえた。
「んー?」
おかしいな。
確かに聞こえたと思ったんだけど…
もしかしたらまた聞こえてくるかも…と、しばらくその場に立っていた。
西の空に沈みかけた太陽が、辺りを黄色く染めている。
そのやわらかい景色は、冷たい冬の、肌に刺さるような冷気を和らげてくれる気がした。
最初のコメントを投稿しよう!