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どれくらい、そこにいただろうか……
太陽は、姿を隠す一瞬手前の鮮やかな橙色を放ち、東の空から夜の帳が落ちてきていた。
庭に出るだけだからと、部屋着のスウェットにダウンジャケットを羽織っただけの私は、ブルッと寒気に震え、肩をすくめた。
何してるんだろ…
とっとと家に入って暖まろうと、足を踏み出した。
その瞬間だった。
───さくらッ!
「ッ!──」
声のした方へ、咄嗟に振り向いた。
それは、祠に背を向けて家に向かっていた私の真後ろで、つまりは祠の方。
振り向いてもそこには祠があるだけで、その後ろは隣にあるお寺との境にあるブロック塀だけ。
「………」
無言で立ち尽くすしかない私の耳に、カラカラっと家の窓を開ける音が聞こえた。
「お姉ちゃーん。ご飯だってー」
庭に響く妹の桔梗の甲高い声。
「今行くー」
肩越しに返事をしながら、祠を見つめた。
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