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「あぁ…あなた、気絶してしまったんですよ」
「気絶!?」
そうか、だから記憶が曖昧だったのか…
「相当のダメージだったんでしょう…肉体的にも…精神的にも…」
「古泉…」
そこで、やっと俺は、古泉が、俺に深い罪悪感を抱いていることに気付く。
自分のせいで、俺がけがをしたんだと。
「古泉、お前は何も」
その言葉を遮るように、傷口に消毒液のしみこんだわたが触れ、走る鈍い痛みに、俺は目に涙を浮かべ、シーツをぎゅっと握りしめてしまった。
「すみません、我慢してくださいね」
「ちょっ、待っ…あぁっ、痛っっ…!」
「すみません…」
古泉は、俺がこらえきれず声を漏らすたび、何度も何度も謝罪の言葉を述べた。
その瞳が、今にも泣きそうに潤んでいたことに、俺は、自分が古泉を助けたことは、間違っていたのではないかと錯覚しそうになってしまう。
…いや、間違いなんかじゃない。
「古泉…っ」
「はい?」
消毒が終わった傷に、絆創膏を次々に貼り付けながら、古泉は小さく返事をした。
「お前、俺の辛い顔、みたいか?」
「は…?」
「俺は、お前の辛い顔、見たくない…だから…」
にこっとほほえむと、古泉ののどが鳴った。
「俺も笑う、から…お前も、笑え」
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