はじめ

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今度は立ったまま抱き寄せられ、優しい仕草で頭を撫でられた。 「っ…ふ…」 俺は、あふれ出した涙につられるように、しゃっくりをあげながら古泉の身体にしがみついた。 今だけ、今だけだから。 …俺が泣いている間、古泉は、俺が言う言葉に相づちをうったり、背中を撫でたり、頭を撫でたりと、子供を扱うように優しく慰めてくれた。 その温もりと優しさに、俺はこみ上げてくる安心感と、安心感ではない何かを感じていたが、何なのかは結局わからなかった。 何だったんだろうな。 …しばらくして。 「…すまん、もう平気だ」 「そのようですね」 だいぶ涙が収まった頃。 涙を拭いながら古泉から離れると、 「顔がぐちゃぐちゃですよ」 と、ハンカチで顔を拭かれた。
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