はじめ

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平気だと言っているのに、いいからと制され、仕方なく俺は目を瞑ってふれる感触に身を任せた。 …やっぱこいつ、手付きが優しいんだよな… ふくと言うよりはぬぐうようにハンカチを軽く押し当てられる感触に、かるくくすぐったいような気持ちになる。 「…はい、もう平気です」 「…あんがとな」 お礼を言うのが、少し恥ずかしくて、声が小さくなってしまったが、古泉はにっこり笑って、 「お気になさらず」 と、また俺の頭をなでた。 …そこで、ふと感じる。 いつもの微笑も、今、俺の頭を撫でている手も、全部ひっくるめて、やっぱこいつはモテる。 今の俺が女で、今までの場面を進んでいったら、きっと俺は、いつの間にかこいつに恋をしてしまっていたかもしれない。 …いや、でも俺男だし。 「…にしても…」 考えていたことを紛らわすように、俺は古泉からすっと離れて窓に歩み寄る。 「ハルヒ達、遅くないか…?」 時計を見ると、9時40分をゆうに過ぎているし… まさか、何かあったとか… 「…あ、メール来てます。30分前に」 「おいぃっ!!」 …思いっきりツッコんだ俺を、多分誰も責めはしないだろう。
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