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「そ、ういえば、あんたが起こしてくれるなんて珍しいな」
今更ながら気づいたことを口に出して言ってみる。
ホー助は一応俺が飼っている黒いふくろう(♂)だがただのふくろうが人語を解し、その上喋れるなどとなるとこれは只事じゃあない。
始めは俺もさっそく魔法世界の洗礼かと思ったが、人に聞いてみるとどうやら違うらしいことが分かった。
まあ聞かなくても早い段階で俺はその事実を知ったんだろう。―――そのふくろうの喋ること喋ること。
うざったいほどにそいつはおしゃべりだった。
やれ腹が減ったのやれ寝床が狭いだのやれ飯が不味いだのやれ尊敬が足りないだの……
俺はあんたの召し使いか下僕か!
何度フラッフィーの餌にしてやろうかと思ったことかっ!
…………俺の苦労話はまたにするとして、今はなんの話をしていたんだっけ。
そうそうホー助の正体だ。
一言で言ってしまえばあいつは
「ヌシに話があってな」
妖怪
「これまではヌシの魔力と我の魔力を同調させて共有していた」
鴉天狗
「だからこそ宿主などという呼び方をしてきたが」
しかもその大ボスの大ボス
「我の魔力が完全に戻った。だからもうヌシに取り憑く必要もない」
鞍馬の大[おお]天狗
「…世話になった。ヌシとの生活は満更でもなかった。傷の小僧や赤目のガキに宜しくと伝えておいて…くれなくともよいな。構わん、ヌシの好きにしてくれ」
俺の悪友で、俺の真実を唯一知ってるやつ
「さらばだ……リウ」
最後に見えたのは黒い渦と、俺が見たことのないとてつもなくデカイ漆黒の鳥だった。
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