黒き少女の邂逅

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.......泣き声が聞こえる。 子供の泣き声。 何が悲しいんだろう? 二人の子供が泣いている。 とても雰囲気の似た男の子と女の子。 手には真っ二つに割れたおもちゃの杖が半分づつ二人の手に握られている。 あれは子供の頃好きだったアニメの主人公が使っていた魔法の杖だ。 この二人の子供は俺と夕妃なのだろう。 小さい頃,よくあの魔法の杖を使ってアニメのまね事をして遊んでいた。 一振りすれば猫にも大人にも戦闘機にもなれてしまう魔法の杖。 大方ごっこ遊びの最中に杖の取り合いになって折れてしまったのだろう。 二人はいっこうに泣き止む気配がない。 ふと俺の背後から二人の名を呼ぶ優しい声が聞こえて来た。 すると二人はさっきまで泣きわめいていたのが嘘みたいに笑顔を浮かべ,二つに割れた杖を手に持ちながら俺の横を通りぬけ声のした方へ走っていく。 振り返ると,そこには二人の手を握り,ゆっくりと歩を進める女性の姿があった。 幼き俺と夕妃はとても嬉し気に繋いだ手を振って,女性に話しかけている。 俺ってあんな顔して笑ってたんだ。 今の俺では決してできない笑顔を少年は浮かべている。
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