投扇興

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男は話しかけられて振り向いた。英国人の船の乗組員である。 「日本人かい?」 「ああ…」 「日本に帰るんかい?」 「いや…日本には仕事でいくだけだ」 話しかけた英国人は不思議そうであった。それはそうだ。懐かしいであろう母国に帰るにもかかわらず男は仕事だ言う。男は前の大きな海を眺めていた。 女学校からの帰り道、マリアとミヤは本屋によるために歩いていた。 「あら?」 ふとミヤがある店を見ていう。その店はこの辺りでは結構有名な骨董品店である。そこにマリアたちの女学校の教師であるあのフランス人の神父らしき者がいるのだ。 「神父様じゃないかしら?」 「…ほんと。どうしたのかしら?」 「私たちも行きましょうよ、マリア!」 ミヤはすっかり敬虔なクリスチャンであったためあの神父を敬愛している。気が引いているマリアの腕を引っ張り骨董品店の中へ入る。中では店主と神父が御互い困惑したように会話をしている。店内の床には無数の扇が開かれ置かれている。 「神父様」 ミヤがフランス語で話しかけると神父は振り向いた。 「ああ、ミス・広瀬にミス・神崎。どうしたんだい?」 .
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