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どん、と人と人がぶつかった。性格には二人組の男のうちの一人と袴姿の女…おそらく最近できた女学校の生徒であろう…がぶつかった。
「申し訳ございません」
すぐさま女はわびをいれぺこりと頭を下げた。見るからに上流階級の女とわかる仕草だ。もっともこの時代に女学校に行くなどかなりのものであろう。おかげで江戸…ついこの間までただの町民であった男は男尊女卑にもかかわらずすぐさま謝りかえした、
「いえいえこちらこそ…」
その言葉に女は顔をあげる。すると男は絶句した。何故ならばその女の髪は茶色く、さらに瞳の色も焦げ茶色で、しかも目が大きく鼻が高い。そう…男は女を西洋人だと勘違いしたのだ。しかもその西洋人が猿の文化と馬鹿にする袴を着ていてしかも流暢に日本語を話す(この時代に教師や宣教師としてきた西洋人は日本語をしゃべる必要がほとんどなかった)そのことに男は驚いたのだ。
「あ、いけない…遅刻してしまう…本当に申し訳ございませんでした。失礼致します」
もう一度頭を下げ女は小走りで立ち去った。
「は~日本語をしゃべる西洋人がいるとはね~」
呆然としたままさっきの男が連れの男に話しかける。
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