嘘吐きと悪魔

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廃屋を見上げた瞬間、悪寒が走った。 見た目はただの廃屋だ。何もない。なのにこの悪寒はなんなのだろうか。 「ふんっ。相変わらず、か」 不機嫌そうに尾を地面に叩きつけながらそう言うと、ルージュはさっさと廃屋の中に入って行った。 ルージュの様子からして知り合いの悪魔か何かだろうと予想しながら俺と桜ちゃんも中に入れば、中は驚くほど綺麗だった。 そして、これまた驚くほど中は洋風で外から見た広さと中が一致しない。 「まるで屋敷だな…」 天井から吊された大きなシャンデリヤ、壁に付けられている蝋燭、丁寧に並べられている色とりどりな花が入った花瓶。真っ正面には階段と踊り場、そして左右に別れている螺旋階段。 「なぁ桜ちゃん、ここ…ビルだよな?」 「あぁ、正真正銘の廃屋ビルだ」 苦笑する桜ちゃんたが、ルージュは鼻で笑いながら「どうせ廃屋ビルに簡単な幻術をかけただけだ」と言いながら再びさっさと右側にある螺旋階段を昇って行く。 しかし、すぐに階段を降りて踊り場の目の前にある大きな扉の前に立った。 「ここから奴の気配がする」 俺は遠慮なく扉を開けた。 そこには一人の男性がダンスホールにあるテラスで静かに月夜を見上げていた。 普通の男性だ。悪魔の羽もなければ尻尾もない。しかし、その男性の髪は長かった。
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