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「君、強いねぇ。」
何とも皮肉な言い方にしか聞こえない自分の言葉はかなりバカバカしかった。
彼は俺を一旦直視し、すぐゲームの世界へと入っていった。
その行為が蔑まれたように感じたのだろうか、
「ゲームが現実だったらいいのになあ。」
と妬むように呟いた。まるで現実では年上の俺の方が勝っていると言いたげな一言だった。さすがにこの言葉には自分も最低という言葉以外見つからなかった。だいたい勝っているとも限らないではないか、ろくに職にもついていないのに。
「なら…」
小さく彼は反応した。
俺は彼の返答に少し動揺したが、その言葉の続きを待つような反応をし返した。
すると彼はつぶやくように、何かを促すように俺に言った。
「なら、現実にしてみようか?」
目元は笑わず口だけに笑みを浮かべ彼はそう言った。まるで人形のようなその笑みに鳥肌が立ち、全身が凍るような感じがした。
彼は途中のゲームをそのままにし、俺の方を向きポケットから紙を取り出し俺へ差し出した。
俺は何も言えずその手紙を受け取ってしまった。まるで彼のあの笑みがそうさせたようだった。
はっと我に帰るとそこにはK.Oされ、コンテニューをカウントしている画面と誰もいなかったかのような席が目の前にあるだけだった。
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