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すごく不思議だった。
今、目の前の鏡にはウェディングドレス姿の私が映っている。
小さい頃は"将来の夢はお嫁さん"って無邪気に言っていたのに大人になるにつれ、ソレが困難なことを思い知らされた。
この日を迎えるまでに……
心から愛する人と出会うまでに……
私はどれだけ悩み、苦しみ、何度後悔しただろう。
―――そして私も大切だと思っていた人を傷つけてしまった。
「珠治どうしてるのかな?」
久しぶりに口にした懐かしい名前に、あの頃の記憶と想いが蘇る。
式前の緊張とは違う胸の高鳴りを覚えながら私は珠治(タマジ)との日々の記憶を思い起こす。
珠治(タマジ)との出会いが私の心の傷を癒してくれた。
珠治(タマジ)との出会いが私に、もう一度人を好きになる気持ちを思い出させてくれた。
珠治(タマジ)と出会ったからこそ今こうしてウェデング姿の私がいる。
でもずっと後ろ向きだった私の背中を押してくれたのは珠治(タマジ)かもしれないけど、珠治(タマジ)との突然の別れの辛さと悲しみから救ってくれたのは今の彼だった。
彼と出会う前は珠治(タマジ)との別れが辛くて……
終わってから自分の中の珠治(タマジ)の大きさ、大切さを思い知らされ、後悔してもしきれなかった。
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