書けなかった名前

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あなたはラブレターを書いたことが ありますか? 私が初めて書いたのは小学三年生。 彼はクラスでも1番人気な優等生。 当時の私は…バサバサなショートヘアに短パン。遊ぶのは男子ばかり。女らしさのかけらもなかった。 クラスの男子も私を女子と見てなかった。 でも… 彼だけが私を女の子として扱ってくれた。 最初は女扱いしないで!と反発してたけど、だんだん素直に受け止めるようになって いつのまにか彼を好きになってしまった。 好きで 好きで ちぎれるくらい切なくて ラブレターを書こうと思い付いた。 汚い字を何度も書き直し、彼のかばんに忍ばせた。 …名前はどうしても書けなかった。 運の悪いことに、ラブレターをホームルール中に彼が見つけてしまい それを読んでいたら、担任に奪われた。 まだ新任だった担任は、顔を真っ赤にしてひどく怒っていた。 「なんて破廉恥な!ませガキ!etc…」 私は… 泣いた。 泣いた。 私は破廉恥なんかじゃない! ただ… 思いを 伝えたかっただけ… それからしばらくは犯人探しが始まったが、日頃から女らしくない私が疑われることはなかった。 いろんな意味で… 傷ついた。 もぅ ずいぶん昔の話。 今でも、夢に出る。 名前を書けなかったラブレター。
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