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…………ふぅ。 生温い風が何処か気持ちが良く、何故自分はこんな所でしかも真夜中に仕事をしているのだろうと思う。 …何もかも“これ”のせいだ。 先程、雪那が殺したオッサン達の周りに立つ人影。 恨めしそうに切なそうに月を見上げるその姿は月明かりに照らされ、見るものを引き付ける…。 青年はチラリと死体に目を向けると溜息を零した。 …何故、こんな気持ちの良い日に限ってこんな死体が出るのだろう。 青年は小さく息を吐くとまた夜空を見上げた。 「……一(ハジメ)?」 青年の横に居たまだ幼さを感じる可愛らしい青年が怪訝そうに顔を覗く。 青年の名は 斎藤 一 (サイトウ ハジメ) そして斎藤の隣に立つ可愛らしい容姿の青年は 藤堂 平助(トウドウ ヘイスケ) 京の人達から壬生狼と呼ばれ、いくたの倒幕浪士達から恐れられている… 新撰組隊士だ。 藤「大丈夫?一ぇ…」 相変わらず夜空を見上げている斎藤を見て、着物の裾野をチョンチョンと引っ張る姿は見る者を和ませる。 斎藤は深く深呼吸すると藤堂に目線を移し、静か口を開いた。 斎「…大丈夫だ平助。良い夜だな…と思ってな…」 斎藤がそう言うと藤堂は苦笑いを零し、死体に目を向けた。 藤「…“これ”が無ければ…ね」 そんな藤堂の言葉に斎藤も同意し、頷く。 斎「…この死体は…刀ではないようだが…」 藤「そうだねぇ。…切り傷は無いしぃ…毒?」 死体の顔を覗きながら呟くと周りの隊士達が気持ち悪そうに口を押さえた。 藤「ははっ。無理もないか…こんな死体見るの初てだもんねぇ…」 斎「…この様に酷い様は…俺達でさえ初め………」 言葉を言い終わる前に斎藤は何かに気づき、刀に手を掛けた。 続いて藤堂もスッと立ち上がり、刀に手を掛ける。 二人は死体の前に立ち、前方から感じる気配が現れるのを待った。 隊士達も気配を感じたのか斎藤と藤堂の横に、死体を囲む様にして並んだ。 そして刀を構える。 ……ジャリ… 斎「…くるぞ…」 その一言で隊士達の顔は引き締まり、ジッと前を見据える。 斎藤と藤堂は刀に手を掛けたまま、殺気を放つ。 ……ジャリ…ジャッ 斎藤「…………」 .
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