未練?

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ポカンとして『誰コイツ』と思考を巡らせること数秒、この男の一番目立つ部分が目に入り、納得した。 「……そういうことかぁ~……」 しゃがみ込んでうなだれる、岩井鈴(いわいすず)、あたしのことである。 この男、腹が真っ赤な血でそまっているわけで。 なのにピンピンお出迎えなんてしているわけで。 この男、生存者じゃないんだと、一瞬で理解した。 そんなことすらどうでもいいかのように、男はあたしに話しかける。 「ん?早く入れよ。荷物整理すんだろ?」 「するんだけど……マジかぁ……」 ある意味ショックが大きすぎて、あたしは立ち直れなかった。 そもそもあたしは東京の学校に行って一人暮らしをするために、このアパートに越してきたのだ。 ……そう、このアパートに、ひとりで、住むために。 なのに先客がいるとはどういうことだ。 これがうなだれずにはいられないだろう。 そう……こういうことだったのだ。 家賃激安……二万円だったことが、こんな理由だったなんて、今更知ったところでもう遅い。 事前に来ときゃよかった。
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