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僕の中で何かが音をたてて崩れ落ちた。 「……じゃあ、死んでくれよ」 抑揚のない、淡々とした言葉。その言葉の意味はしっかりと分かっている。 ただ、田仲は意味を理解しかねているようだ。 「だから、死んでくれよ」 もう一度同じように言ってやった。 今度はしっかりと理解したようで、田仲の顔から血の気が引くのが分かる。 最初の時点で理解はしていただろう。 本気なのか。 それとも冗談なのか。 「冗談、だよな?」 僕は返事もせず、ただただ田仲の顔を見る。 顔に笑みはない。 田仲は腰を抜かし、尻が地面に着く。その場から逃げるように後退る。 恐怖で顔を歪め、乾いた笑いを響かせる。 武器を持っているわけでもない僕をなぜそこまで怖がる! そして逃げるっ! ふらふらと立ち上がり、田仲に被さるように、手は首を目掛けて振り下ろす。 しかし田仲がそれよりも少し早く僕を蹴り飛ばした。体に思うように力の入らない僕はふらつき、倒れる。
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