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足早に階段を下り、先程の紫さんがいた座敷席に来たのだが、そこには紫さんはいなかった。それどころか、紫さんの相手をしていたアリスと光希よりも先に準備を終えていた紅蓮もいず、店内は至って静かだった
中を見回してみても、誰もいる様子がなかったが、外から話し声らしいものが聞こえる。どうやら、外で待っているらしい。外にいるなら店の中にいても仕方ない。とりあえず、外に出ることにした
「遅かったな」
出入口であるドアを開け、外に出ると、目の前には日傘をさしている紫さん。すぐそばに腕を組み、壁を背にしている紅蓮がいた。いたのだが、光希の視線は一度は声をかけてきた紅蓮にいったが、すぐに足元に置かれている物に視線を変えた
「……なにこれ?」
「昔使っていたのを知っているだろ?」
「知ってるけど……まぁいいや」
紅蓮の足元におかれていた物は、開けたら吸血鬼でも出てきそうな黒い棺桶だった
確かに昔使っていたのは知ってはいる。が、まさかまた使うとは思っていなかった。だが、よくよくこの棺桶のことを考えれば、武器にも盾にもなるレベルの強度。それにおまけの能力も付いている。それらのことを踏まえれば、持っていくのもありだろう
まぁそれよりもだ。今は紫さんに準備ができたことを伝えるべきだろう
「紫さん、準備ができました」
「そう、でもそんな手ぶらでいいのかしら?」
「心配には及びませんよ。昔と違って武器ばかりに頼っていませんから」
最初から手ぶらであることを見越していたかのような口調で聞かれたが、軽くあしらった
この人がどこまで俺達のことを知っているかわからないが、ある程度のことは調べられているとよんでも、あながち間違いではないだろうと思う。だから、紫さんの質問をあしらうことにした
「まぁいいわ。それじゃ、行きましょうか」
「わかりました」
紫さんがそう言ったのを聞き、紅蓮は棺桶を持ち上げ、いつでも移動できる状態にしたのを確認し、返事をした
「じゃあちょっと動かないでね?」
「え? それはどうゆう……ウヘァ!?」
一瞬だった。突然、足元に空間の裂け目が開き、俺と紅蓮は重力に従い、その裂け目の中に落ちてしまった
「それじゃ、お願いね? それと幻想郷へようこそ」
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