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しばらく歩くとまわりの風景は、賑やかな街の様子から、落ち着いた自然の風景に変わっていた。そして、緑の深い山の麓にまで来ていた
今回の依頼は、農作物に被害を与えている魔物を討伐してほしいというものだ。数がどれ程かはわからないが、難しい依頼ではないだろう
頭の中で依頼内容を再確認し、紅蓮を見、準備がいいことを確認し、山へ入って行った
山にはいってからしばらく、獣道を進んでいくと、山らしく少し斜面になっているが多少開けた場所に、被害を与えていたという狼のような見た目をした魔物の集団を発見した。数にして十数体。幸い、こちらにはまだきづいていない
俺は持ってきていた片手の両刃剣を鞘から抜き、紅蓮は槍を構えた。そして、アイコンタクトでタイミングを合わせ、魔物に切り掛かった
地の利は魔物にあったが、不意をつかれてはどうしようもない。俺と紅蓮、互いに一体づつ仕留めた。だが出た場所が悪く、囲まれてしまった
「やるねぇ!」
「無駄口を叩く暇があるなら一秒でも早く終わらせろ!」
軽口で紅蓮にそんなことを言ったら怒鳴られてしまった隙と思ったのか、魔物達は一斉に飛び掛かってきた
しかし、残念なことに返り討ちにあい、ほとんどが紅蓮の槍によって肉を裂かれ、生きたえてしまった。残りは三体、逃げる様子はない。ならば仕留めるのみ
「残りいただき!」
その言葉の後、強い風が吹いた。その風を受けた魔物達は鋭い刃物で切り裂かれたような傷が無数にでき、魔物は倒れた
魔物達を切り裂いたのは、光希の魔術だ。魔物に飛び掛かる前には、既に放つだけというところまで準備が出来ていたため、容易に使えた。強い魔術程、発動までに時間がかかるのがネックだ
「終りか」
不服そうな様子を見せる紅蓮。満足な戦闘ができなく、不機嫌になっていた
「不服そうにすんな。今じゃおまえが満足できるようなことにはまずならないから。そんなことより早く帰ろうぜ空間移動で」
紅蓮の内心を無視し話をする。依頼は終了しているのでもうここには用はない。帰って寝たいところだ
空間移動とは、簡単にいえばワープみたいなもので、知っている場所なら自由に行き来できる移動方だ
俺は店の前をイメージし、空間の裂け目を作り出した
「ならいくか」
紅蓮が答えたのを合図に、黒い空間の中へ入った
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