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「待った?」
「ぜんぜん~危うく間に合わないところだった~。危ない危ない。あ、ベルトしなきゃだよね」
何がおかしかったのかクツクツと笑う茶美を横目に、シートベルトをしっかり締める。
「なんかすごい、いい車だね?」
「そうですか? ああ、荷物ここに置けるから。ちょいかして」
私のバッグを座席の横に置いて、邪魔にならないようにしてくれると、茶美はスマホを操作し始めた。
ほんのり薄暗い車内。
夕焼けが茶美の顔を照らしている。
なんだかいつになく大人に見えた。
「どうする?時間見たら18時台と20時台があるみたいですけど。先なんか食べます?先、観てもいいけど」
「ん~どっちでも……けど18時台だとギリギリだよね?先ごはんにしよっか」
「おっけい。なんか食べたいのある?通り道じゃなくてもいいし」
「ええ~~なんだろう。食べたいものー?」
私の困った顔を見てか、茶美が笑った。
「優柔不断ですからね。じゃあ……そうだな。映画館のビルになんかありましたよね。カフェとか、焼肉とか色々」
「んー焼肉!いいね」
「焼肉……にする?いや言ってみたけど、映画デートに焼肉ってどうなの?あり?」
えっ。
まさか茶美の口からデートって言葉が出るなんて思わなくて、あからさまにドキっとしてしまった。
顔を赤くする私を見て
驚いたような茶美の表情が目に刺さる。
「……うん、まぁ確かにね。ないか」
「じゃあカフェにしときます?」
「うん、うん、確かそこのパスタがおいしいって聞いたことあるような」
ギアがドライブに入って、車が走り出した。
薄暗い車内で見る茶美の笑顔に、さっそくドキドキが止まらない。
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