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ただの後輩だって分かってるのに
どうして私はこんなに意識してるのか。
「そういえば部屋。そんなヤバかったの?片付け放棄させちゃいましたけど」
「あ~うん、ヤバすぎ。たまにしかやらないから荒れまくり」
「へえ?こないだはぜんぜん綺麗でしたよ。急だったのに」
「ええー?ぜんぜんヤバいよ~。茶美よりは絶対マシだけどね?」
「うわ。悔しいけどなんも言えない」
「あははっ」
そう言って笑う茶美の運転は穏やかで、信号で停止するときすら緩やかに速度を落とした。
「美月の家、やっぱり広いですね。敷地で150坪くらいあるでしょ」
「んー敷地はね、確かそのくらい、かな?よく分かるね」
「まあね。築何年?」
「築……何年だろう。私が生まれた年に建ったってことは、」
「じゃあ24年だ」
考えなくても当たり前に年を分かられている。
そんなちょっとした事がくすぐったい。
退屈しないようにあれこれ話しかけてくれる茶美が、たまにこっちを見てくる度に少し照れた。
普段乗らないはずなのに
慣れた感じのそのハンドルさばきからも余裕が感じられる。
なんだか私の話ばかりでは悪くって、
話の流れにそって茶美の話題を持ちかけた。
「茶美は?地元は東京なんだよね?」
パネルをタッチして曲を変える茶美が画面を見たまま答える。
「ですね」
「なんか意外とおぼっちゃまだったりして~」
「どうですかねえ」
「おうちは?広いの?」
「さあ。どうだろ?」
「え~。大学は地元の方だった?」
「そんな知りたい?」
真面目に答えない茶美が急に真面目な顔でこっちに向くから、ドキッとして何も言わずに頷いた。
「知りたい……ですけど。ダメですかね?」
はぐらかそうとする茶美の様子から、なんとなく生い立ちは聞いちゃいけないような気がした、けど。
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