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「いや?僕のことなんか興味ないでしょと思って」
「ええ~~なんで?あるに決まってる」
茶美の発する言葉にいちいち食いついちゃう私を横目で笑ってる。
なんかからかわれてる?
「大学は京都でしたよ」
「あ、へえー?じゃあ一人暮らしだ」
「うん。お陰さまで家事はひと通りできちゃう的な」
「えーー洗濯もそうじも料理もいけちゃう的な?」
「的な感じですね」
家事なんてしないと思っていた後輩の新たな発見。
感心するのと同時に胸がチクッとした。
カッコよくて面倒見がよくて家事までできるなんて。これまでどれだけモテたんだろ、なんて。
「にくいな~もう~完璧じゃんか」
「そうですか?そんな男いっぱいいるでしょ」
と言いつつもちょっぴり照れくさそうに前に向き直した茶美の微笑みが、薄暗いはずなのに眩しい。
気づかれないようにさり気なく
ちょっと長めに横顔を見てしまった。
彼女とか……何人もいたんだろうな。
思ってみればそれも聞いたことなくて、急に気になった。でもなぜか知りたくないような気もした。
日々一緒にいる私たちには話題なんか探さなくても溢れていて、目的のモールには沈黙することなくたどり着いた。
映画館のフロアより先にレストランフロアへ。
茶美は本当は歩くの早いのに、いつも私のペースに合わせてくれて好き。
並んで歩くのもいつも通りで、このほどよい距離感が心地いい。
さっき話していたカフェに入って席に着くと、茶美が私にも見えるようにメニューを広げてくれる。
「ん~~どうしよう。迷うなあ」
「そのおいしいパスタにするんじゃないの?」
「んーーでも、あーーでもなあ、」
「まーた。どれと迷ってるんですか」
これ、と、ふわとろオムライスを指せば、じゃあ僕がそれにするから半分こね、と茶美が言って、早速スタッフの呼び鈴を押した。
私が口を開くより先に次々と注文してくれる後輩はやっぱりリードがスムーズだ。
年上なはずの私がつい甘えちゃうのも、そのせいかもしれない。
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