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「すっかり元気になりましたねほんと」
「うんー?そりゃもうお陰さまで」
「よかったよかった」
「その節は本っ当ーーにお世話になりました」
「別になんもしてないよ」
「ありがとね、ほんと」
「もう。いいってもう、」
「ほんとに。来てくれて嬉しかったです」
ただ頷くだけの茶美の目が優しい。
向かい合って見るのはやけにドキッとした。
二人の料理がほぼ同時に運ばれてくると、私の分のフォークをカトラリーケースから取ってくれる。
スプーンは使わないタイプでしょう?
なんてからかう口調さえも、今日は優しくて怒れない。
「んん!おいしい~」
「ね。ヤバいうまい」
取り皿に分け合ったパスタとオムライスは超絶品だった。
タバスコをかけすぎてむせる私を見て笑う茶美が、呆れながらもお冷をつぎ足して渡してくれた。
ちょうど食べ終わるタイミングで着信音が鳴って、携帯を見る。
「えっ、」
メッセージを見て思わず声が出た。
送り主は、
おそらく休憩中であろう湯野さんで。
“4日の日、暇だったら買い物に付き合ってほしいんだけどどうかな?”
……って。
思いもよらない誘いに動揺する。
え、え、買い物?4日に?
「湯野さん?」
返信の文を作ってる途中に降ってきた茶美の声。
軽く頷いたあと、茶美の表情が心なしか真顔に変わった、気がした。
「そ。なんて?」
「ん?うーん……」
「なに?」
「ええ?うん……」
「へえ。言えないようなことですか?」
茶美には何でも話せるとはいえ、湯野さんの話題になるとたまに不機嫌になるから言いづらかった。
最近は特にそう感じる気がする。
きっとぬるま湯に浸かり続ける私に呆れてるんだろうけど、それでも笑ってやり過ごそうとする私は情けない。
少し顔をしかめて答えを待つ茶美と目が合う。
きっとはっきり答えないとこのやり取りは終わらなそうだと思ったから、正直に話すことにした。
「……買い物。つき合ってほしいって」
「ふうん?いつ?」
「来週。の、4日」
「4日!?」
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