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大事な人だから。
茶美のくれた言葉は、なにか意味のあるものなのだろうか。
ただの友達として言ってくれてるのは分かってるはずなのに、脳がいちいち色んな意味を探るから困る。
辛口だけど優しい後輩。
どんな時でも、何をしていても、いつでも気がついてくれる優しい人。
少し前に出会ったばかりだけど、ずっと前から一緒にいる気さえする。
私にとっても……大切な人。
なんでか分からないけど急に涙が滲んできた。
自分でもこの感情がうまく説明できない。
涙が溢れてしまってはメイクが崩れるから、こぼれないように何度も指で拭った。
途中、茶美がこっちを見ているような気がしたけど恥ずかしくて目を合わせられなかった。
結局集中できないまま映画は終わってしまって。
エンドロールも終盤になると、茶美がそっと立ち上がった。
「出ましょうか」
「あ、うん、だね」
まだ残っているドリンクを持つのを忘れて振り向けば、ちゃんと私のを持っていて、まったくもう、と呆れて笑う。
「そんな泣くようなシーンあった?」
「え、いやほら~、なんか迫力に感動しちゃって」
「……へえ?」
やっぱり気づいていた茶美が腑に落ちない顔をする。けど、はぐらかすしかなくて。
「泣き虫ですねほんと」
「……いーじゃんもう~」
「あ、怒った」
「怒ってないけど~。でもなんか、バカにしてるよね?」
「いや?別に?」
私を見下ろしてニヤける茶美が本当にバカにして言っていても、不思議と嫌味に感じないのは、茶美に対する信頼があるからかも。
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