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外に出るとすっかり夜は更けていた。
「ありがとうございますほんと。なにからなにまで」
帰りの車に乗る時もお礼を言うと、私には目を合わせないまま「どういたしまして」と、茶美が口元を緩ませる。
と、眉を少し下げて丸めた目で私に向いた。
「まだ時間ある?」
「え、うん大丈夫だけど」
「もうちょっとだけいい?」
「茶美が大丈夫なら私はぜんぜん。どっか行きたいとこあるの?」
「てわけじゃないですけど。せっかく車だし帰るのもなーって思ったから。ちょっと遠回りして送ってもいいですか?」
まだ一緒にいれることが決まった時、変に喜んでしまっている自分がいた。
「もっちろん。わ~ドライブとか久しぶり」
「じゃあちょっとそこでコーヒーでも買いますか」
茶美が目で指した道路の方の向かい側に、ドライブスルーのあるカフェが見えた。
なんにも考えなくてもスムーズにリードしてくれる。こんなとこがやっぱり魅力的だ。
ガラス張りの店内を脇目に、ドライブスルーの列へ。
メニューの看板が私にも見えるようにとシートにもたれる茶美は、もう決まったと即答。
「んーーじゃ~私は右上のキャラメルラテにしようかな」
「キャラメルの、ホットね?」
私が頷くと同時にマイクに向かってオーダーして、車をゆっくり進めた。
その隙にサイフを取り出したけど、見つかったとたんに拒まれてしまった。
「いいってば。こっちが誘ったんですから」
「でもごはんも出してもらったし~。ほんとは私の奢りだったのに。このくらい出させてよ」
「それはさっきのドリンクでチャラだから」
話しながらも窓を開けてお会計を済まされてしまう。熱いラテをそっと手渡されてはもうお礼を言う他ない。
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