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帰って真っ先にする事は、とにかく湯野さんがどういうつもりかを問いただすことだ。
美月を誕生日に誘い出すのは、知らなくてたまたまなのか。
それとも知っていてのあえてなのか。
前者ならまあ弁明の余地はある。
もし後者なら、納得なんてできないし許容するつもりもなかった。
勢い任せに玄関を開けて入れば中には灯りも人影もなくて。1LDKの部屋のどこにも湯野さんの姿はなかった。
もう仕事は終わっているはずだから、また取り巻きの子と会ってるかなんか……だろう。
まったく。
なんでこんな時にいないわけ?
こっちは今すぐにでも話したいってのに。
勝手に複雑な思いになりながら、それでも心を落ち着けたくてすぐにシャワーを浴びた。上がってもまだ湯野さんの姿はない。
髪をタオルで拭いていると、振動した携帯が鈍い音を出しているのに気がついた。
「もしもし、」
『あ……ごめん~起きてた?』
声の主は美月。
帰ってすぐプレゼントのお礼のメッセージが来て、それに返信して終わってたから、電話まで来るのは意外だった。
「美月こそ。どしたの?」
『ん~~?うん。なんか眠れなくてつい』
「うそ。寝ることが特技なのに?どうかしちゃった?」
『あはは。ほんとですよね~~なんか。どうしちゃったんだろね』
誰もいないリビング。
そのおかげで美月の声の後ろにある音まで聞こえてくる。
お湯が沸くような音、カップに注ぐような音。
「今コーヒー飲んでるでしょ」
『ん~そうそう、今いれたとこ、……よっ』
一声聞こえたあとに、足音が響く。
カップを持ってキッチンを出たらしい。
美月と話は続いているけれど、階段を登るような足音と、部屋に入るような音が後ろに。
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