58人が本棚に入れています
本棚に追加
「いま部屋ですか?」
『当たり~』
「階段登ってた感じしたから」
『うん、下だとやっぱ落ちつかなくて。お母さん起きてくるかもだし』
ふう、と一息ついて、カップを啜るような音。
美月のことだからまた甘いのにしたんだろうな。
『さっきね、さっそくお母さんに見せちゃった。ネックレス。もらっちゃったーって』
「あほんと?」
『私の好みよく分かってるねって言ってた』
「や~~ほんとに?それは良かった。けど大丈夫でした?遅くまで連れ回しちゃって……怒ってない?」
『ぜんぜん。むしろやっと彼氏できたの~なんて、勝手に勘違いして祝福モード全開』
クスクス、と笑う柔らかい声のトーン。
電話だと余計に声の甘さが際立つ。
落ち着いた吐息なんてつかれると、いつも以上に色気を感じて無性にときめいた。
「……まあ5年も片思いしてたら浮いた話なんてなさそうですもんね」
『あーもー言わないで~それ。図星すぎて泣けるから』
おどけた声に笑えば美月も笑ってるのが分かる。
『でもいいの。哀れな美月さんには茶美がめちゃくちゃ優しくしてくれるから』
「ふふ。なにそれ」
『は~~なんか。無性にお礼が言いたい。いつもいつもありがとうございます』
「いやどうしたの急に。そんなかしこまって言われると怖いんですけど」
『だってほんとに優しいんだもん。自分じゃ分かんないんだろうけどさ?』
ただお礼を言われただけなのに、心臓がさっきからやかましく脈を打つから困る。
最初のコメントを投稿しよう!