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自分じゃ分かんないなんてそんなことはない。
美月といると無意識にあれこれしてあげたくなるもんだから、考えなくてもつい行動に出てしまう。
愛しくてたまらないから無性に。
自分の魅力に気づいてないのはそっちの方だ。
「まあ、誰にでも優しいわけじゃないですから」
『えっ?』
「いやなんでも。独り言です」
『え、あ、うん。……あもうこんな時間?寝なきゃだね』
「ああ……ですね。大丈夫?寝れないならまだつき合うよ」
『ううん~だいじょぶ。遅くにありがとうございました』
「いいえ。じゃあまた明日」
『うん、明日ね。おやすみ』
電話というのは、会って話すのとはまた違った感覚だった。
よほどプレゼントに感激してくれたのか、こんな風に慕われると妙に嬉しくて、湯野さんに対する怒りも今だけは薄まった。
美月の心に少しは入りこめている。
そう思っていいんだろうか。
今日一緒にいて、あながちうぬぼれでもないようなそんな気がした。
僕を見る眼差しが優しいから?
会話の節々ひとつひとつがやけに嬉しそうだから?
言葉で説明するのは難しい、けど、美月の空気感がそう思わせる。
もしかするとただの思わせぶりでもないのかもしれない。
勝手だけどそう思っていたかったり。
なんて浮かれそうだった僕の思いは、今世紀最大の思わせぶりな人が帰宅したことによって引っ込んでいった。
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