58人が本棚に入れています
本棚に追加
「ただいま。どうだった?映画」
帰ってリビングに入るなりこっちに来た湯野さんは、ソファで横になる僕を覗きこんで食い気味に聞いてきた。
驚きと呆気に取られながら起き上がる。
いやなんで真っ先にそこなんだよ。
食いつきたいのはこっちだってのに。
「僕言いましたっけ?今日行くこと」
「ああごめん、店でちらっと聞こえたんだ。お前が美月ちゃんに電話してるの」
「ああ、そうですか。まあ普通に。面白かったですよ?」
「そっか。それはよかった。あとは?なんかどうだった?」
「どうって、」
「なんかほら。なんていうか、大丈夫だった?美月ちゃん」
なにそれ。何が言いたいのか分からない。
今日のことをやたら掘り下げたいことだけは分かったけど。
「……大丈夫ってなにが?別に普通に、いやいつになく楽しそうでしたけど」
「そう。それはよかった」
ホッとしたような顔して天井を仰ぐ。
なんだっていうんだほんと。
続きを促すようにして見上げれば、今度はやたらに真顔を向けてくる。
「心配してたんだ、美月ちゃん。なんか悩みがあるみたいだから」
「……悩み?」
「ちょっと前にすごい悩んだ感じの時あってさ。気になって聞いたけど、そん時は無理して笑って話してくれなくて。店でもいつも通り笑ってるけど……心配なんだよ。なんか聞いてない?」
誕生日の一件ですら耐え難かったというのに、さらにここまでされたんじゃたまったもんじゃない。
おまけになんか心底気にしている的な顔されては、黙ってはいられない。
最初のコメントを投稿しよう!