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「義高様…私はあなたをお待ちしております。だから、必ず迎えに来て下さいね。」
私は涙をこらえ、必死に笑った。
義高様に私の笑顔だけを覚えておいて欲しいから。
「桜、手を出して。」
私が義高様に向かって両手を出すと、懐から刀を取り出して、私の手毎握りしめた。
「懐剣…?」
「そう、懐剣。これは、私の母上が下さった物だ。きっと、桜を守ってくれる。私の代わりに。」
そう言うと義高様は、私の手を離した。
義高様の代わりなんていない、行かないで、側にいて欲しい。
口を開けば、そう叫びたかった…
でも、それじゃぁ、義高様を困らしてしまう…
言えなかった…
「義高様…御武運を…」
私が口に出来たのは、それだけだった。
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