第一章

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完全に見えなくなった所で ようやく、私は立ち上がった。 ボロボロの鞄から、 タオルとジャージを取り出す。 体を拭くと、 体に残る痣が、 嫌でも目に映る。 涙が出そうでも、 必死に堪えた。 約束したんだ。 お兄ちゃんと。 私に、親はいない。 お父さんが、 友人の借金を背負わされ、 自殺。 お母さんは、 いろいろなストレスで体調を崩し入院。 そのまま静かに亡くなった。 私は今、 一人暮らしをしている。 とても小さく、 古く、汚いアパートだ。 母さんの遺したお金で、 借りている。 でも、そろそろ底を尽きる。 でも私は、 焦りなど感じていなかった。 私には、友達はいない。 「暇だから」 その理由で、学年のリーダー的存在の彼女にいじめられている。 名前など、知らない。 私には、居場所はない。 たった一つの居場所は、 お兄ちゃんだったのに。 お兄ちゃんだけが、 私のいじめに真剣だった。 そして、お兄ちゃんと 約束したの。 学校では泣かないって。 泣くのは、お兄ちゃんの前だけだって。 でも、そんなお兄ちゃんも、 バイク事故で他界。 こんな不幸の連続、ある? それから、私はもう一度、 運命に裏切られた。 隣の部屋にいた、 高校1年の鈴夏。 おすそ分けしてくれたりして、 仲良くなって いじめの事を話したら 主犯を殺しそうな勢いで 激怒してくれたっけ。 そして、 鈴夏も親の転勤で 引越して、東京へ。 長崎にいる私には、 すぐ会える訳も無く、 連絡は月一の電話。 お金かかるから、月一。 3ヶ月電話がかかってこなくて 心配でかけたら、 「あ、愛羅姉?ごめん、今忙しいの。また掛けるね」 その一言を最後に 電話はかかって来ていない。
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