第一章

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その時分かった。 私に居場所なんかない。 居場所を作っちゃいけないの。 これ以上、 悲しみたくないなら。 ジャージを着て、 床を雑巾で拭いて、 机を揃えて、帰る。 私の日課になりつつあった。 でも、今日でおしまい。 家に帰り、 冷蔵庫の中が空なのを確かめる。 そして、 お兄ちゃんの写真と、 携帯を鞄に詰め、 家を出る。 大家さんの部屋へ。 コンコン 「はい」 遠くから聞こえる声。 扉から一歩下がって待つ。 ガチャ 「あら、愛羅ちゃん。どうしたの?」 大家さんは、60を過ぎたおばあさん。 とてもお世話になった。 「こんばんは、少し、お話がありまして。」 「なんだい?」 「私、この家をでます。」 「!?」 「施設の勧誘がね、うるさいので。手続き、お願い出来ますか。」 「……そうかい、そうかい。わかったよ。寂しいけど、またね。」 「有難うございます。あと、部屋にある家具、どうぞ提供いたします。では。」 一礼して、歩きだす。 私は、ある場所に向かっていた。
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