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神苑の廃墟――円形を留めず朽ちた柱が左右に並立し、哀愁が漂う。
古代、聖域と謡われた面影もない。
歌声は深部から流れている。
草木をかき分け、娘の姿が見えたのと同時に止んだ。
切り崩したような石が疎らにある中、唯一楕円形の岩石が陽光を受けていた。
先ほどと移り変わって頭上には紺碧の空が広がり、全裸で娘が横たわる。
探していた娘だ。
娘は青年を一目見るなり、含み笑いを浮かべる。
「お嬢様、変なところに行かないでくださいと何度も申したはずです」
「探さなくていいのに。来ちゃったのか、シリウス」
細面の繊細な顔立ち、触れるのを躊躇わせる雪白の肌。
絹のように滑らかな白銀の髪、真紅の瞳は鮮血よりも透き通る。
――隔世遺伝のアルビノの典型例だ。
鎖骨や肩の節が少し目立つが、程よくついた筋肉が彼女を一層妖艶にさせる。
何年経とうと変わらない容姿を保持している。
特殊な血筋ゆえに常人より長く生きる、娘。
「当たり前です」
ため息をつくと、彼女は朗らかに喉を鳴らす。
「しょうがないじゃない。冷たくて気持ちいいんだもの」
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