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気がつくと、その場から全力で疾走していた。
道端に横たわる屍に目もくれずに、一心に。
――――
――――――
鐘が挽歌のように流れて国中に響き渡る。
不思議と涙は出てこなかった。
永久の栄光を誇るはずの、面影ももはやない城下町を通り抜け、丘陵地を目指して走る。
息は絶え絶えで苦しい。
脇腹が刺すように痛い。
足の関節が悲鳴をあげ、芝生に転倒しては、立ち上がる。
「っ……」
刺すような痛みに耐えながら頂上に辿り着くと、下界の惨劇とは裏腹に澄んだ青空が視界一杯に広がった。
いつも我がままを聞いてくれた、病弱で優しい優しい姉。
アリスが大好きだった。
子供の理想を押し付けた結果だとしても。
仮にも王家を影で護る一族が亡国に加担するなんて。
丘陵地から王国を一望する。
穏やかな風が妙に、気味悪い。
生まれ育った国が赤い業火に包まれ、時間の経過と共に澄んだ水に沈んでいく。
「――――か?」
怜悧な声が背後から響き、レオは驚いて振り向いた――。
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