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他に身寄りがいなかったレオは、顔も知らない祖父に引き取られた。
荘厳な装飾の郊外に存在する屋敷が新居地となった。
住人は他に二人の青年がいて、祖父とは対照的に温かく歓迎してくれた。
人なりの姿をしていたけれど“聖獣”という種族だという。
彼らが希有な存在だとレオが知るのはもう少し先になる。
あの日、背後に立っていた祖父を見たとき、同じ紅の瞳で血縁者だと判った。
交流が全くなかった上に、気難しい老人とは馬が合わず、自然に距離を置いた。
数年経過した現在、必要程度の会話しか言葉を交わすことはない。
生活に慣れるに従い、血筋に恥じないように勉学や剣術、魔術などあらゆる知識を絶え間なく叩き込まれた。
おかげで《勉強》は大嫌いだ。
悪夢の甦る夏、静かな秋冬、新たな春が当たり前に時だけが巡っていく。
月日は憂いもなく流れていき、十五の誕生日に小さな決断をした。
――エディン家で特殊な後継者の証を持つ“ゼロ”の名を継承する。
それは『原罪』の意味を示唆する。
血と血で贖われた小王国の終末は薄れることもなく、いつまでも鮮明に記憶を焼きつけた。
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