第一記. 運 命

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 震えるように葉が鳴り響き、力強い娘の明澄な声が樹木をすり抜ける。 心酔したいところだが、残念ながらそんな場合ではない。 「ふむ……ここから遠くない場所のようですね」  独り言を呟くと瞼を閉じ、本来の一角獣としての聴力を頼りに居場所を探る。  ――帰りたい。 「よりによって神苑の廃墟とは……」  長い吐息をつく。  森を掌握してる者でも、下手すれば永久に迷いこむいわくつきの場所である。  よくそこまで行けたものだ。 屋敷に残した彼といたら、明らかに迷子になるだろう。  声と風の鳴らす木葉以外は寂然としている。  主と令嬢の性格は真逆だが、微妙なところで似通ってる節がある。 そういう点はさすが血筋、と納得せざるをえない。  渋々青年は岩石から降りた。 「はぁ……。昼になる前に連れ戻すとしますか」  優先すべきことを念頭に気配を隠し、慎重に歩を進めた。  心地よい歌声が薄暗い森を淡く灯す光のようだ。 一抹の澱みもなく、小川のように浸透していく。  ――愛おしそうに狂おしく旋律を変えながら。image=387261627.jpg
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