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(『してないわよ』って……)  嘆息しつつ、とりあえずは青年の誤解を解こうと向き直る。  ――が、 「あのさ、オレは……」 「女の子が『オレ』はよくないな」  当の青年に遮られる。 「いや、だから――」  話を聞け、と青年の腕を掴んだ瞬間、目前に人影がちらつき、くらりと眩暈に襲われた。 「……っと、危な……」  倒れるルウディーを、青年が支える。 「ルウ? あなた、まだ具合が悪いんじゃないの?」  心配そうにティエナが覗き込む。 「……いや、ほんとに大丈夫。ただなんかちょっと……」  ティエナに微笑みかけながら、内心首を傾げる。 (今、何か見えたような……)  己の手と青年とを見比べてみるが、よくわからない。 「ちょっとごめん」 「えっ? ルウちゃん?」  青年の手を握ってみるものの、もう人影は見えなかった。 「……ルウちゃんって、大胆なんだね」  頬を赤らめながらそんなことを言われて、ルウディーは我に返った。  掴んでいた手を離し、ティエナを振り返る。 「……ティエナ。オレの荷物は?」 「ここにあるけど……」  早く青年の誤解を解きたいのはやまやまだが、それより気になることがあった。 「ちょっとテーブル借りるな」  ティエナに渡された荷袋からカードを取り出すと、テーブルの上に広げた。 「カード?」 「静かに」  ルウディーの行動に疑問をはさむ青年を、ティエナが制する。  
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