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ふと、そこに影がかかり、頭上から声がした。
「どうした?」
声の主は、日焼けした肌の、筋肉質のがっちりした体格の青年だった。
「連れが少し気分が悪くて……」
ティエナの答えに、青年がルウディーを覗き込み――……、静止した。
ぼーっとルウディーをみつめる。
心なしか、その顔がほんのり朱に染まっている。
「……あのぉ……?」
嫌な予感を覚え、ティエナは恐る恐る声をかける。
「タイプだ」
「はぃ?」
ぼそ、と呟かれた言葉に、思わず声が裏返る。
しかし、それには気付かず、青年はルウディーに話しかけた。
「お嬢さん、よかったらウチで休んでください。俺ん家この近くなんで」
「……いや、あの」
青年のとんでもない勘違いを否定しようにも、今のルウディーにはそれだけの元気はない。
少し話すだけで吐き気が込み上げてくるし、ぼぅっと視界が揺らぐ。
正直限界であった。
ティエナもまさかの展開についていけず、呆気にとられるばかり。
そんなふたりに気付く様子もなく、青年はルウディーをひょいと抱き上げた。
(……まあ、今のルウじゃ、女の子に見えても仕方ないか……)
すぐに我に返ったティエナは、諦めたようにため息をついた。
実際、体調不良から潤んだ瞳に普段の彼の強さはなく、華奢な少女に見えてしまう。
ティエナとて、うっかり間違えた過去があるのだから、人のことは言えなかったりする。
(早くルウを休ませてあげたいし、ここは甘えることにしましょう)
そう結論をくだした。
それとほぼ同時に、もはや限界に達していたルウディーは、青年に体を預けたまま、意識を失った。
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