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その女は、気配を感じさせなかった。
血族を見つけようと感覚を研ぎ澄ませていなければ、おそらく気付かなかっただろう。
女の方もダーナディアに気付かれるとは思っていなかったのか、驚きを隠せない様子だった。
見開いた黒い瞳。同じ色彩を持つダーナディアと視線が絡む。
強い眼光を放つ双眸。
しかしそれは、どこか陰を帯びたものだった。
ルウディーのような意志の強さとは違う。ティエナのような、悲しみと優しさを内包した強さとも異なる。
どこか危うい光を点す瞳である。
(……血の気配がする)
どくどくと、鼓動が速まる。共鳴している。
血族だと、確信する。
声をかけようと、女の方へ近付く。しかし、
「……」
かけようとした言葉が声になる前に、女はひらりと身を翻し、路地の裏へと姿を消してしまった。
足を止めたダーナディアは、小さく息を吐いた。
共鳴を頼りに女を追おうと、再び意識を研ぎ澄ませた、その時、
「ダーナ! ルウが……!」
緊迫したティエナの声が、ダーナディアの耳に届いた。
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