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音速を遥かに越えた拳の乱打。
黒斗は走りながら、眼を凝らす。
(一○、二○、三○、四○、五○…五二!)
見切った。
一秒間に放たれた拳の数は五二発。
前進する黒斗が掻い潜る隙間はない。
ないのならば、
(作るッ!)
乱打の中へと突撃し、延びきる前の拳を叩く。
真正面からではなく、側面を叩き軌道を変え、自らが進む道筋を強制的に作り出す。
「おっ?」
いままで返り討ちにしてきた少年が、乱打を突き抜け懐に潜り込んできた。
ルシフェルは驚嘆の顔を作る。
「まだだッ!」
そこで、黒斗の攻めは終わらない。
震脚で地面を揺らし体制を崩して、できた隙に全力の拳突き刺す。
黒の本質によって極限まで威力を高められた拳は、邪魔するものもなくルシフェルの腹部へと直撃した。
ズズッ――と、ルシフェルの身体が僅かに後退した。
たった二センチメートル。しかし、“神の肉体の一端”である大男を二センチメートルも後退させたのだ。
黒の本質をフルに活用して戦ったのではなく、必要最低限にまで抑え、ここぞの時に爆発させる。
それが正しい使い方で、黒斗は習うわけでもなく、実戦の中で自ら答えを導き出した。
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