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振り返ってみても誰もいない。
声はたしかに聞こえたはずなのに、奴の姿はない。
「大神黒斗!上に!」
放たれたエレナの声に従って上へと視線を向ける。
そこに、奴はいた。
虚空に佇む一人の男。
神力帝式という、神魔導師。
「テメェ…。なにしに来やがった」
黒斗自身が驚くほどに、とてつもない嫌悪感を示す声だった。
神力帝式は文字通り見下ろす視線で、
「あと五日だってことを教えにきただけダ。愉快に楽しくやってっからヨォ、まさか忘れてんじゃねぇかと思ってナ?親切だロ?」
「ありがとよ。お礼は五日後に返してやるッ!!」
怒りを隠そうともせずに黒斗は吠える。
対して、神力帝式は興味もなさそうに目を背け、代わりにルシフェルを見る。
「頼むゼェ、グランチェスタ。なんとしてでも黒の本質を完成させロ。じゃなキャ、つッッッまんねぇかんナァ」
「言われなくともそのつもりだ。吠え面かくなよ」
「ヒャッヒャッヒャッ!負け犬が言うじゃねぇカ。そういうのが負け犬の遠吠えってんだろうナ」
盛大に笑い、神力帝式はもう一度黒斗を見る。
砕けたような笑みを黒斗の眼に焼き付け、一瞬にして姿を消した。
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