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病室には特注品の全長二メートルを超えるベットが置かれていて、その上に身長二メートルを超えた大男が寝かされている。
「大丈夫か?」
大男に右腕は無い。肩から先が無くなっている。
つい昨日までは確かにあったその腕は、一○時間ほど前、唐突に無くなった。
『無くなった』という表現に、嘘偽りはない。本当に唐突に無くなったのだ。
「問題ない」
大男は軽々と言うが、片腕を無くした事実を、問題ないと片付けられるわけがない。
大神黒斗は入院中なのだが、それもまたブルックと同じような状態だった。
左腕がまったく動かせない。
それが黒斗の入院理由の一つでもある。
指先から肩の付け根まで、まんべんなく亀裂が渡り、蝋人形のように指先一つすら動かせないのだ。
だから彼にはわかる。
腕が使えないという不便さを。
それが、使えないだけではなく無くなったというのなら、精神的苦痛は数倍にもなるだろう。
黒斗は円形四脚の椅子から立ち上がり、病室を出ていく。
ブルックから聞いた限り、銀髪に紫電の眼光の少年が手を触れたとき、無くなったらしい。
恐らくその少年が何らかの魔法を使ったのだろう。
許すわけには、いかなかった。
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