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弁護士のはなし
「控訴はしません」
穏やかに微笑む死刑囚と、昨日までの浮ついた被告人とが一致しなかった。
勝ち目などない裁判だった。
それでも弁護士としてここにいるのは、国選弁護人として選ばれてしまい、上司から断るという選択肢を取り上げられてしまったから。
やりたくもない裁判で、殺人鬼の味方だと叩かれる毎日。
一審がようやく終わってもこれからまだまだ続いていく日々に今から辟易していたところで告げられた言葉は衝撃だった。
「ここまで付き合ってくれて、ありがとうございました」
惰性に礼を言われることが、こんなにも心を締め上げるだなんて知りたくなかった。
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