ある日部屋の中で吸血鬼に出逢った

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敢えて言おう。 何を何であえたのかさっぱりわからんが、敢えて言おう。 それは突然のことだった。 「しかし汚い部屋だな。住家は家主の心を映し出すというが、その理論だとそこな人間。お前はクズであると言わざるを得ない」 部屋の中央から響く高飛車ボイス。 ぜひ「ハンバーガーをもて」とかおっしゃって頂きたい声なのだが、いま気にするべきはそこではない。 4月も後半に差し掛かり、初春の薄ら寒さもなりを潜め始めた今日この頃。 深夜ともあるので玄関の鍵はキチンと閉めているし、窓も当然閉めている。 窓に関しては雨戸まで閉めているという、完璧な戸締まりだ。 どこぞの三世な怪盗ならいざ知らず、この至って普通の住宅街に潜伏するような空き巣の方々には忍び込めるはずもない。 にもかかわらず。 三世でも怪盗でもない彼女は、当たり前のようにそこで俺をまっすぐと見据えていた。
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