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+.。.:*・゚☆side:???
逃がすのか、それとも泳がせるのか…。
そんな事を考えながら、ふと目の前で不思議な色を発光している円陣に目線を向けた。
「もうすぐ…もうすぐ…」
もうすぐ、自分の念願が叶うと言うのに。
どうしてこんなにも心が晴れないのだろうか、と男は思った。
けれど、その問いには誰も答えることは無く――…
いや、彼自身応えて欲しいとは思っても居なかったのだが。
広いドーム状の部屋の中、天井近くのある一点が、ボンヤリと霞んだ。
「報告を」
その霞にチラリと一瞬だけ目線を向けて、男はそう言う。
男の言葉の後に、ヒラリッと一枚の紙が男の目の前に現れ、男は切れ長の目を更に細くさせた。
「…大分て梃子摺(てこず)って居るようだな」
最もそれがあるからと言って、自分が不利な状況になるわけではない。
寧ろ…優位に立つためには好都合なのだ。
男は、くくっと喉を震わせると、暗い部屋の中で声を殺して笑った。
「もうすぐ…」
そして再び繰り返す。
もうすぐ、と。
もうすぐ――…。
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