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「と、いうことは、まだ別れられていない」
「・・・うん」
あからさまに、隣で藤沢がため息をつく。
春らしくなりその姿を、通行人が早足で追い越していく。
新宿から十分ほどにあるそのオフィスビルは、美優が入社以来通勤している場所だ。
周りには百貨店や飲食店がひしめきあい、ほっと息つくところなどない。
常に人が行き交い、それでも存在は希薄な街。
その中で見つけた藤沢は、美優にとって大事な同僚であり、友達である。
「だってこの間のキャンセル代、あんたが払ったんでしょう?」
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