最悪な出会い

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まだしぶとく残っていた強烈な風邪の菌に冒された美優は、半月ほど前、彼氏との旅行をキャンセルした。 それが原因で、現在も喧嘩の最中なのだ。 「絶対におかしいって。美優の彼氏」 「分かってるって。私も腹は立ててるの。でも、あいつの口車に上手く操られちゃうんだよねー」 先ほどの上司が乗ったエレベータを避けて、美優も藤沢と乗り込んだ。 他の会社の人間も乗り合わせるため、エレベーターの中は自然と無言になる。 それでも、前の年配の男の頭からは整髪料の香りがするし、隣の女性は香水がきつい。 ほんの数秒ながらも、ふと緊張する空間である。
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